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司書のおすすめ(「図書館だより」より)

更新日:2024年5月1日

毎月発行している「図書館だより」に掲載した「司書のおすすめ」です。本選びの参考にしてください。
資料によっては、貸出中の場合があります。詳しくはお問い合わせください。

『「おふくろの味」幻想誰が郷愁の味をつくったのか』湯澤 規子/著(光文社)2021年刊行 一般書383.81【南館所蔵】

著者の調査によると、「おふくろの味」が料理本のタイトルとして出現するのは1960年代であり、わずか40年ほどの間にさまざまな変遷を経て、消えていく。その時期はちょうど地方から都市に流入する人が増加した高度経済成長期から、核家族化、専業主婦の増加期と重なる。
当初の「おふくろの味」は、都市に出た若者たちの「望郷の味」という意味であり、「母の味」ではない。彼らの出身地、特に農山漁村において炊事は仕事の合間に家族の誰かが行うものであり「母」に特定されることはないからだ。また、同時期に農山漁村でも郷土の味を後世に伝えようとする動きがあったことから、故郷への思慕を青年期以降の男性がよく使う「おふくろ」という言葉で表現することが広く受け入れられた。その後、都市に出た若者たちが家庭を持ち、核家族の中で専業主婦となった「お母さん」が家族のご飯を作る姿が、理想的であり、あたかも古くからの伝統であるというようなジェンダーバイアスを孕んで社会に認識されはじめると、広告戦略やメディアの煽動も相まって、「おふくろの味」の意味は「母が手作りする家庭料理の味」に変化していく。
最終章では、「おふくろの味」を料理本に冠することがほとんど見られなくなった昨今、かつて「祖母から母へ、母から娘へ」といわれた家庭料理を著名な料理研究家の息子たちが自分の哲学やアレンジを加えて発展させていること、SNSでは老若男女問わず料理を楽しむ様子が配信されていることに注目している。
本書では「おふくろの味」がテーマになっているが、人間が創り出した概念はいずれも実は多様に移ろいやすいものである。「それに気づけば、私たちは他者や世界、そして自分に対して、少し寛容になれるのかもしれない」と、著者が料理を通して覗いた未来に明るい兆しを感じた。(南館 大西)

『旅する練習』 乗代 雄介/著(講談社)2021年刊行 一般書913.6ノ【本館所蔵】

2020年の春、語り手である小説家の姪、亜美(あび)が志望する私立中学校(女子サッカーの名門校)に無事合格した。折しも通っていた小学校が臨時休校になったのを機に叔父と姪は、我孫子を起点に利根川の堤防道沿いを歩いて鹿島を目指すというわずか6日間の『旅する練習』を計画する。
『旅する練習』とは、亜美は移動しながらサッカーの練習であるドリブルやリフティングをする。叔父は「ひとけのない風景を描写する」修練として、その場でノートに文章を書きつける。目的地を目指して「歩く、書く、蹴る」を繰り返す、叔父と姪それぞれの練習の旅のことだ。そして、最終ミッションはこの旅のきっかけとなった亜美の一言、「去年の夏、鹿島へサッカーの合宿に行った際、借りたままの本を返しに行きたい」だった。叔父は、国語が苦手で読書もめったにしない、サッカーが大好き、オムライスが大好きで「私の練習に不可能はない!」と屈託のない笑顔を見せる彼女の願いを叶えるため、鹿島までの道のほとんどでボールが蹴られるようなルートを選んで旅を続けていく。
叔父の修練である、山川草木などの風景や鳥獣虫魚の緻密な描写も素晴らしく、目の前にその景色や動物達の息づかいをも感じさせた。旅で通りかかるその土地々々の歴史にも触れ、土地について書かれた田山花袋や安岡章太郎、柳田國男の文章を巧に引用している。「柳田國男」、「カワウ」、「ジーコ」、「お不動さん」等の話で読者を充分に堪能させながら、主軸である姪との旅にも見事にシンクロさせているところがにくい。彼の手によって私達は予想もつかない場所へ連れていかれてしまうのだ。<この作家、なかなかやるな>と唸らされた。
読後はしばらく茫然としてしまうだろう。地方都市の平凡な風景、地続きの日常の中に、市井の内なる声や祈り、願いがこの物語に込められている。(本館 二井)

『ぼくの村は壁で囲まれた パレスチナに生きる子どもたち』高橋 真樹/著(現代書館)2017年刊行 一般書227.9【本館所蔵】

2023年10月、衝撃的なニュースが世界中を駆け巡った。ハマスがイスラエルに攻撃をしかけ、民間人など200人以上をガザ地区に連行したというニュースである。イスラエル側は、今回の攻撃をホロコーストと同様に扱い、ハマスの殲滅を掲げており、この戦争が終結する兆しが見えない状況である。
では、このようなことがなぜ起こったのか、特に日本人は、よくわからないという人が多いのではないだろうか。
本書は、パレスチナの現地取材などを通じ、子どもたちを含む現地の方々の生の声を記しているうえ、パレスチナ問題を歴史的にもわかりやすく書いており、この問題が宗教や民族的な争いなどというものではないことがわかる。
著者は、ホロコーストやアパルトヘイトと同じことが、70年以上も前から現在進行形で、パレスチナ人に対して続いていること、そして問題の根本は、パレスチナ人の人権が踏みにじられている現状を知りながら、国際社会が放置し、傍観し、もはや加担していると言ってもいいような状況にあることだとも伝えようとしている。そして、何よりパレスチナの子どもたちの苦しみと、絶望的な状況でも平和を取り戻そうとする人々の思いが、本書から伝わってくる。
著者は、次のように語っている。「個人が何かやったところで問題の解決につながるようなことはできないかもしれません。しかしだからといって、何もできないわけではありません。…まずチャレンジして欲しいことがあります。それは、『知ること』、『伝えること』、『行動すること』です。」
確かに、一人の行動が直ちに問題の解決につながるわけではないだろう。しかし、本書を読んで、小さなことでも自分ができることを考え、積み上げていきたいと思った。(本館 杉谷)

『ふるさとの手帖』かつお(仁科勝介)/著(KADOKAWA)2020年刊行 一般書 291.087【本館所蔵】

表紙ののどかな風景と青いスーパーカブの写真が印象的な本書は、数々の日本の風景写真を中心に構成された、ある旅の記録である。
著者かつお(仁科勝介)氏は大学生だった21歳の時、日本の全ての市町村をスーパーカブで巡るという壮大な旅を計画する。この挑戦のきっかけとなったのは、ヒッチハイクで行った九州一周だった。車の窓から知らない町の景色を見ているとき、自分は日本のことをまだ全然知らないと痛感したという。
日本には1,741の市町村があることを知った著者は、その全てを自分の力で巡ったら、やっと日本のことが分かったといえるのではないかと考え、長い旅に出発する。旅でのたったひとつの決めごとは、訪れた全市町村の風景を写真におさめることだった。そうしてできたのが本書である。
旅先で撮られた写真は、有名な観光名所や絶景ばかりではない。むしろ、下校中の子ども達や、道に咲く花、踏切を走る列車といった、ありふれた景色を写したものも多い。しかしどの風景にも、そこに住む人々の暮らしが感じられる。行ったこともなければ、名前さえ知らなかった場所も、誰かにとってはかけがえのない思い出や生活とともにある大切なふるさとなのだと気づかされる。
美しい写真を見ていると、つい穏やかで楽しい旅を想像してしまうが、本書を読むと決して順調で楽しいことばかりの旅ではなかったこともよくわかる。時に思いがけない困難に直面し、孤独で過酷な旅に心が折れそうになっても、進み続ける著者の姿には勇気をもらえる。
全市町村一周の旅を終えたとき、どんな景色が目の前に広がるのだろうという好奇心に突き動かされて旅を続ける著者に、旅で出会った景色が教えてくれた答えは、意外なものだったという。いったいどんな答えだったのか、ぜひ手にとって確かめてみてほしい。(本館 福田)

『聞く技術 聞いてもらう技術』東畑 開人/著(筑摩書房)2022年刊行 一般書 361.454【両館所蔵】

「なんでちゃんと聞いてくれないの?」という言葉を耳にしたり、感じたりしたことはありませんか?パートナーや家族、職場の人との関係が上手くいかなかったり、政治や社会問題で人と対立したりする時、人は正常に「聞く」ことができなくなってしまうそうです。
本書は、臨床心理士である著者が、人の話が聞けない、あるいは人に話を聞いてもらえない原因を紐解き、「聞く」ために必要なことや「聞く」ことのちからについて分かりやすく解説しています。
聞く技術として、「眉毛にしゃべらせよう」や「返事は遅く」など12の小手先の技術が紹介されています。しかし、これは人の話をちゃんと聞ける時に使える技術であって、自分のことに必死で人の話を聞く余裕がない時には通用しないのです。
話を聞けない要因には、「孤独」が大きく関係しているといいます。全身やけどを負ったある少女が治療で激しい痛みに苦しんでいる際に、ただ聞いてもらうだけで前よりもずっと痛みに耐えることができたそうです。自分の孤独を誰かが分かってくれていることで心にゆとりが生まれます。そこで、著者は、<「聞く」ためにはまず「聞いてもらう」ことからはじめよう>と言っています。特に当事者同士ではなく、第三者に聞いてもらうとよいそうです。聞いてもらう技術については、日常編と緊急事態編の二つに分けて紹介されています。
「聞いてもらえているから、聞くことができる。つながりの連鎖こそが必要です。」という言葉に、人と人とのつながりは大切だと改めて気づかされました。話を聞いてもらえる人がいることはとてもありがたいことであり、反対に誰かの話を聞くことはその人にとってとても大きな支えになると感じました。対人関係で悩んでいる人は多いと思います。心に大きな傷を負う前に、まずは「聞いてもらう」から始めてみませんか?(本館 神村)

『女の子がいる場所は』やまじ えびね/著(KADOKAWA)2022年刊行 一般書 726.1ヤ【本館所蔵】

2006年から毎年、世界各国の「ジェンダーギャップ指数」が発表されている。2023年、日本の順位は146か国中125位で、過去最低だった。そんな話をニュースなどで見聞きするたび「問題だ」とは思うものの、ジェンダー問題を取り上げた本には敷居の高さを感じてしまう人に、まず本書をすすめたい。
本書は、困難な環境で生きる女性をモチーフにした漫画を多く手掛けている漫画家やまじえびねが、新しい担当編集者からの提案に応えて描いた短編漫画作品である。物語の舞台はサウジアラビア、モロッコ、インド、アフガニスタン、そして日本。それぞれの国の10代の女の子が「女の子だから」直面する疑問、違和感、悔しさが、女の子の視点で描かれている。
モロッコに住む小学4年生のハビーバは、メガネをかけている。おばあちゃんの古い友人であるシャマおばさんに「娘の人生は容姿に左右される。勉強ができるなんて男の反感を買うだけ」と言われて憤慨するが、シャマおばさんの背中にある大きな傷跡が「字が読めない」ことによってできたものだと知り、苦しく悲しい気持ちになる。インドの少女カンティは、ママの再婚でお姫さまのような部屋を手に入れた。家事や弟の世話で学校を休みがちだったのが一変して、ミッションスクールに通い、家庭教師もつけてもらっている。しかし、何不自由ない生活を与えてくれる新しいパパには、困窮する女性の弱みにつけ込む一面があった。自分には何もできないのかと嘆くカンティは、ある決意を固める。
国の歴史や文化が違っても、女でも男でも、見えない力に生き方を制限されることは「おかしい!」と感じた少女たちは、読者に訴えかける。もう誰も、学ぶ機会を奪われてひどい目に遭うことがないように。本を読む喜びを奪われることがないように。女の子がいる場所からの願いを知ることから始めたい。 (南館 大西)

『脳を創る読書』酒井 邦嘉/著(実業之日本社)2017年刊行 一般書 S019.1【本館所蔵】

子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究(国立青少年教育振興機構・青少年教育研究センター)によると、読書のツールに関係なく、読書している人はしていない人よりも意識・非認知能力が高い傾向があり、本(紙媒体)で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向があることが報告されている。
本書は、言語脳科学の第一人者である著者が、脳の不思議と「読書」の関係について、<読書は脳の想像力を高める><脳の特性と不思議を知る><書く力・読む力はどうすれば鍛えられるのか><紙の本と電子書籍は何がどう違うか><紙の本と電子書籍の使い分けが大切>の5章に分けて具体例を交えながら、時には、図やクイズなども用いて、私達にわかりやすく紐解いてくれている。
本書を通して、著者が繰り返し伝えていることがある。それは、「自分の言葉で考える」ということだ。例えば、『「読む」ということは、単に視覚的に脳に入力するというのではなく、足りない情報を想像力で補い、あいまいなところを解決しながら「自分の言葉」に置き換えていくプロセスなのだ―』や、『自分で考えて書き、書いて考える、そうした時間がないと、知識は自分のものにならない』などである。
読書を通じで想像力を培うことで言語能力も同時に鍛えられ、その言語能力に裏打ちされた思考力が確かになる。このことが「脳を創る」ということなのだ。      
「自分の言葉で考える」過程で創られた読書脳は、様々な場面で問われている決断に活かされ、未来の幸せに向かう力となるだろう。 (本館 二井)

『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン/著 上遠 恵子/訳(新潮社)1996年刊行 一般書 404【両館所蔵】

著者のレイチェル・カーソンといえば『沈黙の春』を書いたことで有名なベストセラー作家かつ海洋生物学者ですが、その出版後、彼女はガンにおかされながら、姪の息子、ロジャーのために次作を執筆し始めました。しかし残念ながら、執筆途中で亡くなってしまい、未完成の原稿が残りました。そんな彼女の残したメッセージを世に出そうと、友人たちが原稿を整え、写真をつけて出版したのが、『センス・オブ・ワンダー』です。
本書は、著者がロジャーと一緒に海辺を歩き、森の中を探索したことなどをもとに書かれていて、「センス・オブ・ワンダー」とは、「神秘さや不思議さに目を見はる感性」と訳されています。そして「この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。」と綴られています。
大人は、子どもに多くの知識を授けよう、身に付けさせようと思う一方で、自分たちがどのように子どもたちを教育したらよいかわからない、と悩むものだと思います。しかし、著者は、豊かな感受性を育むために、自然の神秘さや不思議さへの感動を子どもと分かち合うことが大切であり、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要でない」と説いています。子どもたちにとって何より大切なのは、その子の好奇心に寄り添い、その感性に共感することであり、豊かな感性という土壌を作ることができれば、自然と知識も身に付き、そうして得られた知識は生涯忘れることがないのだと思います。
子どもたちにとって大切なことは何か、そして今、最大の環境破壊である戦争が起きている中で、どのように子どもたちの感性を育んでいくべきか。驚くほど豊かな感性にあふれた著者の文章にふれながら、自分の「センス・オブ・ワンダー」を磨いていきたいと思いました。 (本館 杉谷)

『パパラギ』ツイアビ/著 岡崎 照男/訳(学研プラス)2021年刊行 児童書 361.5【南館所蔵】

本書は、南の島サモアの族長ツイアビ氏が初めてヨーロッパを旅したときに感じた文明国の印象をまとめたものである。タイトルの「パパラギ」とは、サモアの言葉で「文明国に暮らす人々」のことを指す。
本書を読むと、ツイアビ氏がパパラギの暮らしに対して驚きを感じたことが伝わってくる。パパラギはせっせと家を建て、都市を作り、文明を築いている。ヨーロッパには、映画館、新聞、本、鉄道、電話といった南の島の暮らしにはない便利なものがあふれている。しかし、ツイアビ氏はそれらを礼賛することはない。むしろ便利になればなるほど、パパラギが失ってしまったものがたくさんあることに気づいている。
たとえば、常に時間は流れているはずなのに、パパラギは時計を見ては「時間がない」と焦り、「もっと時間があればいいのに」と不平不満を言う。ただ時の流れるままに今を楽しめばいいということを忘れてしまっている。そして、お金にやたらと執着して、自分よりも貧しい仲間がいても分け与えようという気持ちをなくしてしまっている。さらには、新聞や本に書かれた知識をため込んで、常に忙しく頭で考えることばかりしている。ただ身体と心で世界に触れて楽しむことができなくなってしまっている。
ツイアビ氏はこのようなパパラギの暮らしに疑問を投げかけ、南の島の人々に「いったいだれが私たちより豊かだろう」と問いかけている。
本書が書かれたのは今から100年も前のことだ。しかし、現代を生きる私たちが読んでもハッとさせられる部分も多い。ツイアビ氏の言葉には、本当の豊かさとは何なのだろうと、人々を立ち止まらせるだけの力がある。自分にとっての当たり前を疑い、時には振り返ることの大切さを伝えてくれる。 (本館 福田)

『ほんのきもち』朝吹 真理子/ほか著(扶桑社)2018年刊行 一般書 914.68ホ【本館所蔵】

日常の中で、誰かの家にお邪魔する際に手土産を持って行く、旅行のお土産を渡す、遠方の家族へ仕送りする、作り過ぎた食べ物をおすそ分けするなど、ほんのきもちとして誰かに贈り物をすることがあると思います。
本書は、そんな「ほんのきもち」がテーマのアンソロジーとなっていて、16人の作家や漫画家、編集者たちの贈りものにまつわる短いエピソードが載っています。もらうと嬉しい差し入れの話、贈りものにコンプレックスを感じている話、日常的な気軽な贈り物を「小歳暮」と呼んで楽しんでいる話、家にやってきた犬がもたらした形のない贈り物の話など、テーマは同じでも書く人によって異なり、様々な見方や感じ方を楽しむことができます。
なかでも、甲斐みのりさんの手土産選びの話では、贈り物選びを楽しむコツが紹介されていて、誰かに贈り物を贈りたくなりました。甲斐さんが講師をされている「手みやげ講座」では“自分らしい定番手みやげ”候補として、(1)生まれた土地の物、(2)今暮らす家(職場)の近所で買えるものを発表してもらうのだそうです。ついつい高価で良いものを選ぼうとして、あれこれ悩んで探し回ることもあるのですが、それが必ずしも良いものとは限らないし、自分の身近なものや思い出とともに選ぶほうがより気持ちが伝わりやすいのかもしれないと読んでいて感じました。
本書に登場する贈り物はどれも素敵で、個人的には坂木司さんがちょっとしたプレゼントに選ぶという美噌元の「美噌汁最中シリーズ」が気になっています。
思いがけずもらう贈り物の嬉しさや、相手を思い浮かべながら何を贈ろうかと考えるワクワク感、贈り物を渡すときのドキドキ感など、様々な感情が混ざり合う「ほんのきもち」を皆さんもぜひ味わってみてください。 (本館 神村)

『国境のない生き方私をつくった本と旅』ヤマザキ マリ/著(小学館)2015年刊行 一般書 726.101【両館所蔵】

古代ローマを舞台にした漫画『テルマエ・ロマエ』の大ヒットで一躍有名となったヤマザキ氏は、多くの著書やテレビでその博識ぶりや母の破天荒な子育てエピソードを披露しているが、本書では彼女の旅の遍歴とそこで出合った本について語っている。
ヴィオラ奏者だった著者の母は、娘が生きていくための教養を得るには「大自然と旅と書物」が必要だと気づき、幼い娘2人を連れて東京から北海道へ移り住むことを決断する。それが旅の始まりだった。
北海道の雄大な自然を駆け回った少女時代、スウェーデンの児童文学『ニルスのふしぎな旅』に自分を重ね、主人公のように鳥の背中に乗って空を飛び、動物の世界で生きることを夢想した。詩人の彼と同棲しながらイタリアのアカデミアで絵を学び、文壇サロンに入り浸った17歳から10年間の貧乏な青春時代を支えてくれたのは、各国から集った知識人に勧められて読んだ安部公房と三島由紀夫。出産を機に日本に戻り、漫画家として歩み出して気づいたのは小松左京や星新一に代表される日本SFの素晴らしさ。夫に伴って赴いたシリアで見たのは『アラビアン・ナイト』さながらの人々の暮らしだった。この世界がどんなに広いかをこの目で確かめる旅路のなかで、生活習慣も宗教も考え方も違う人々とたくさん出会い、ときには価値観の違いにぶつかり合いながらも「わかり合いたい」と願う彼女の傍にはいつも本があり、彼女を支え、鍛えてくれた。
地球サイズの地図を携え、人と本との出合いによって身につけた教養と審美眼で生きることを教えてくれた母が娘たちに繰り返し伝えた「他人の目に映る自分は、自分ではない」というメッセージが胸に残る。他人の目から自由でいるためには、まだ見ぬ世界への扉を開き、自分の感性を信じるに足るものに育てなければならない。さあ、自分を鍛えてくれる本を探しに、一歩踏み出そう。 (南館 大西)

『徳川家康-江戸の幕開け-』松本 清張/文 八多 友哉/さし絵(講談社)2017年刊行 児童書 289.1ト【両館所蔵】

ふとしたきっかけから思いがけない一冊と出合うことがある。現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」を見る前に、小説を読もうと思い立ち、何がいいかと調べてみた。「徳川家康」と言えば、山岡荘八著(全26巻)を思う人が多いだろう。他にも、司馬遼太郎や隆慶一郎、安倍龍太郎等、名だたる歴史小説家が名を連ねる中、推理小説作家としてのイメージが強い松本清張の名に目がとまり、その意外性から手に取って読んだのが、本書である。徳川家康の一生を、彼が生きてきた時代や同時代を生きた彼と関係の深い人物などを織り交ぜながら、その人間像を浮かび上がらせた歴史小説(伝記)であり、丁寧な解説と描写でわかりやすく書かれていて大人にも十分読み応えのある児童書だ。
家康が幼い時に母と生き別れ、11年間も人質として他国にやられたことや、織田信長の死後、豊臣秀吉に先に天下を取られたために40歳から21年間も辛抱することになった場面などでは、「苦労することの意味」や「苦難に負けない辛抱強さ」など著者自身の言葉で説いている部分が見受けられる。子ども達へのメッセージとしてだが、大人が読んでもストンと胸に落ちる説得力と愛情を感じて、著者に励まされているような気持ちになった。
信長、秀吉、家康、三者三様の天下取りは見どころで、特に家康が信長、秀吉と決定的に違った「改革(組織力)」について興味深く読み進んだ。辛抱強く苦労を乗り越える力や、天下人を立てつつも自分というものはしっかり持って、学問や読書を修養し、質素倹約、感情によって行動することを戒めとした家康の人間像を知ることができるエピソードも満載である。晩年焦りが出て、短気で感情的になる場面などの描写もまた、著者ならではの味が出ていて、家康という人間により引き込まれていった。人間を多面的に捉え、その深奥に触れることができる松本清張の世界を是非味わってもらいたい。(本館 二井)

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教育委員会事務局 図書館 市立図書館(本館)
〒525-0036滋賀県草津市草津町1547
電話番号:077-565-1818
ファクス:077-565-0903

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