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司書のおすすめ(「図書館だより」より)

更新日:2022年9月1日

毎月発行している「図書館だより」に掲載した「司書のおすすめ」です。本選びの参考にしてください。
資料によっては、貸出中の場合があります。詳しくはお問い合わせください。

『わたぶんぶん わたしの「料理沖縄物語」』 与那原 恵/著 (講談社) 2022年刊行 一般書 596.04【南館所蔵】

本書は、2010年刊行の単行本を、沖縄の本土復帰50年となる今年、文庫版として再出版したものである。著者は沖縄人の両親を持つが、自身は東京生まれの東京育ちで、沖縄の思い出はほとんどなかった。しかし、ノンフィクションのライターとして、早くに死に別れた両親の足跡をたどって、琉球王国の士族家系である父方の祖父母が住む沖縄や母が幼い頃を過ごした台湾を旅したり、ボリビアの沖縄移民の村を訪れたりするうちに、苦難を越えてなお温かく旅人を受け入れる人たちとの交流を通して、おいしい料理に出会い、ルーツである沖縄とのつながりを少しずつ結んでいく。
タイトルの「わたぶんぶん」とは、沖縄の言葉で「おなかいっぱい」という意味である。ごちそうに満たされ、大いに酒に酔い、ついには踊りだしてしまうさまを表すような愉快な響きだ。また、副題の「わたしの「料理沖縄物語」」には、本書に何度も登場するおしゃれで粋な「おじさま」こと、古波蔵保好の著書『料理沖縄物語』へのアンサーソングとしたいという意図が込められている。
出てくる料理の数々は、今日では有名になったものもあるが、初めて聞くものも多い。母の女学生時代からの友人で、新宿の沖縄料理屋「壺屋」のおばちゃんが作る絶品「ソーミンプットゥルー」は「ソーミンチャンプルー」とは別物で、「あんだぁ」(豚のあぶら)と「てぃあんだぁ」(手のあぶら)が味の決め手だという。宴会好きの著者が友人にふるまう「みぬだる」は黒ごまをまぶして蒸した豚肉料理で、ふんわりと優しい味。父が兄や姉には内緒で作ってくれた思い出の「ぽうぽう」もきっと優しい味がしただろう。
どんな人の懐にも飛びこむ、著者の気取らない性分がにじむ文体が読んでいて心地よい。挿画も表紙も、著者の愛する人たちの手によるもので、本書が愛情を込めて作られたことがわかる。料理だけでなく、本も作り手の「てぃあんだぁ」が味わいの決め手になるのだろうと思った。「くわっちーさびたん」(ごちそうさまでした)。(南館 大西)

『世界「失敗」製品図鑑』 荒木 博行/著 (日経BP社) 2021年刊行 一般書 675.3【本館所蔵】

 「失敗」からも成功へのヒントが見つかることがある。「失敗は成功の基」ということわざがあるように、失敗経験から学びを得るのにおすすめしたいのが本書である。
 コカ・コーラやグーグル、任天堂、トヨタといった名立たるグローバル企業の新商品や新サービス、新規事業の「失敗」に注目し、20の事例が紹介されている。一つ一つの事例に対して、(1)どういう製品だったのか、(2)どのようにして失敗に至ったのか、(3)なぜ失敗したのか、(4)私たちへのメッセージという4つのポイントに分けて書かれている。ただ失敗した製品を紹介するのではなく、失敗に至る背景まで丁寧に解説されていて、具体的な企業の裏事情や仕組みを知ることができる。また、著者オリジナルのポップなイラストも入っていて読みやすい。
 主な失敗事例として、経営の意図が上手く顧客に伝わらず批判の声があがり姿を消した「ニュー・コーク」(コカ・コーラ)、過去の成功体験により甘い見通しで難易度の高いビジネスに参入したら多くの損失を出してしまった「NOTTV」(NTTドコモ)、無防備な策であったにも関わらずトップが尊大であったため誰も反対意見を言わずすぐに白紙撤回となった「クイックスター」(ネットフリックス)などがある。中には、顧客の声を聞かなかったことで事業に失敗した経験を経て、その後の新事業立ち上げの際は、近所の人や若いスタッフの声に耳を傾けることを大切にして大成功を収めたという企業もある。
 本書で紹介されている失敗の原因はどれも身近に起こりそうなものばかりで、大企業でもこんな失敗をするんだと驚いた。「失敗とチャレンジはセットメニューであり、単品注文はできない」という著者の言葉から、失敗を怖がって何もできないよりも、失敗をどうリカバリーして次につなげるかが大切なんだと気付かされた。  (本館 神村)

『ワカレ花』 けんご/著 (双葉社) 2022年刊行 一般書 913.6ケ【両館所蔵】

物語は、春から一年を通して様々な恋模様を描いた短編集で、「散り桜」「ユキヤナギ」など美しい花の名前の章タイトルが散りばめられています。プロローグにはタイトルとなっている「別れ花」が登場し、一気に物語の世界へ引き込まれます。
第1章「始業式」は、高校生の頃の淡い初恋を大学生の娘に語る形で物語が進んでいきます。電車の中で名前も知らない男の子に恋をした主人公の遥は、少しでも彼に近づきたくて、読書が苦手にもかかわらず彼が読んでいる本と同じものを読むようになります。声を掛けたくても掛けられない、気づいてほしいけど恥ずかしい、高校生の純粋な気持ちの描写は、大人になってしまった私には少しまぶしく感じるけれど、やっぱり主人公と一緒にドキドキしてしまいます。短編集でそれぞれの話は完結しますが、2つの大きなストーリーがそれぞれの章と少しずつ重なりあっていて、あれ?もしかしてこの登場人物は、と気づくと物語を違った見方で楽しむことができます。久しぶりに読んだ青春恋愛小説でしたが、本書を読んで、フレッシュな気持ちを忘れず、いつまでも色々なものにときめくことができる大人でありたいと思いました。
7月18日に開館20周年を迎える南草津図書館で、本書の著者であるけんごさんの講演会を開催します。本書がデビュー作のけんごさんは、TikTokやInstagramなどのSNSでおすすめの本を紹介されている、小説紹介クリエイターで、1989年に出版された筒井康隆の小説『残像に口紅を』を紹介したことがきっかけで、計11万5千部の増刷となり、出版関係者からは、日本で一番本を売るTikTokクリエイターと言われているそうです。「装丁が素敵」「表紙を見ただけで読みたくなる」と、講演会の実行委員メンバーである市内中高生9名も大絶賛でした。講演会では、自身の読書経験やおすすめ本の紹介にも触れていただく予定です。読んでから見る人も、見てから読む人も、けんごさんの魅力を是非体験してください!!(南館 塩崎)

『カビの取扱説明書』 浜田 信夫/著 (角川書店) 2020年刊行 一般書 465.8【南館所蔵】

6月と聞いて、みなさんが連想されるものは何だろう。私がイメージしたのは「毎日のように雨が降り、洗濯物が乾かない」「衣替え用に防湿剤を買わなくちゃ」「暑くなる前にエアコンの掃除もしなければ」等々。そこに共通する黒い影の存在にはたと気づき、本書を手に取った。
著者は、カビを専門に研究してきた第一人者で、テレビやラジオにも出演している人物だ。長年に渡って研究所の市民相談窓口でカビに対する苦情相談を請け負ってきたため、平易な言葉でわかりやすく、ときにはとても楽しげに、身近なカビとのつき合い方からマニアックなカビの世界までもを紹介している。
カビは、ウイルスや細菌とともに「微生物」としてひとまとめに考えられがちだが、大きさや生物としての成り立ちは全く違う。カビが属する菌類には、私たちが食用だと思っているキノコや酵母も属しており、分類学的にはカビと酵母は一体である。日本の食文化にカビの働きは欠かせないし、チーズやワインも嗜むにも関わらず、カビに悪いイメージがつきまとうのは、みてくれの悪さだろうと著者は嘆く。
しかし、著者は「カビのコロニーは美しい」と繰り返す。中でもコウモリ等の糞に生えるカビは格別に美しく、魅せられるという。カビは悪者という先入観を持っている我々にはすぐにはピンとこないが、冬にミカンの段ボール箱で青くカビたものを発見したときのことを思い出すと、独特の匂いとともに周辺が白く中心部が青緑色の円状のカビの姿が思い浮かんだ。確かに美しい青緑だったと言えなくもない。
元来、野外の厳しい環境で細々と健気に生きてきたカビは、人類が作り出した快適な住環境に豊富な栄養を与えられたからこそ大繁殖したのだと知ると、複雑な心持ちになる。浴室のタイルの目地にはびこる黒い点々を憎らしく思いながらも、しげしげと見つめずにはいられない。 (南館 大西)

『自分で「始めた」女たち』-「好き」を仕事にするための最良のアドバイス&インスピレーション- グレース・ボニー/著 月谷 真紀/訳 (海と月社)2019年刊行 一般書 159.4【本館所蔵】

本書は、独立や起業をした、個性的で才能にあふれる女性、112人が登場し、それぞれのファッションやオフィス、作品等の豊富なカラー写真とインタビューが掲載されている自己啓発本です。女性たちの職種は、料理研究家、デザイナー、作家、キュレーター、陶芸家、コメディアン、ジャーナリスト等、いろいろで、年齢も19歳~94歳までと実に様々です。女性達の多様な人生は美しく、ページをめくるごとに、それぞれのしなやかなパワーに励まされ、力が湧いてきます。
インタビュー内容は、「子どものころの夢は?」、「駆け出しのころ役に立ったアドバイスは?」、「仕事場のお気に入りポイントは?」、「キャリアや仕事のために払った最大の犠牲は?」、「あなたにとって成功とは?」、「夜眠れなくなるような不安や悩みはある?」、「自分でビジネスを始めて得た最大の教訓は?」、「ミスから学んで成功につながったことはある?」、「自信をなくしたり逆境に陥ったときの立ち直り法は?」、「自分らしく好きなことをしようと奮い立たせてくれる座右の銘は?」等々、共通の質問に答えてくれています。同じ質問の部分の答えを追って読むのも面白いですし、それぞれの人物のカラー写真とインタビューから人となりや人生を想像して読むのも一興です。例えば、子どものころ俳優になるのが夢だった、ライターのアシュレー・C・フォードさんは、スランプから脱出したい時の特効薬に、「「めぐりめぐる月」(シャロン・クリーチ著,講談社)を読み返す。」と答えていて、「いつだって、本の中に自分の強さを取り戻す力や自信を見出してきた」という彼女の一文に“私も”と共感しました。そして、彼女が駆け出しのころ役立ったアドバイスは、「たかが最初の一歩と思いなさい」。新しくスタートしたばかりのたくさんの人達にこの言葉が届きますように!  (本館 二井)

『中学生の頭の中身をのぞいたら、未来が明るくなりました。』なりたい大人研究所/編 KTC 中央出版 2020年刊 一般書 816.8【本館所蔵】

2019年に全国の中学生を対象として、「なりたい大人作文コンクール」が開催された。本書には、その1万件を超える応募作品から選ばれた105名の作品が掲載されている。「なりたい大人」と言っても、人それぞれ。初めて作った料理を家族に褒めてもらったことがうれしくて料理人を目指している子や飼っている魚を救えなかった経験から魚を治療する医者になりたいと思う子。中には、なりたくない大人が浮かぶ子、大人になるということや人生の生き方について考える子もいる。作品からは、一人ひとりの真っ直ぐな想いが伝わってくる。作文のほかに、コラムとして「将来なりたい職業」ランキングや女子中高生の流行語も掲載されていて、様々な視点から中高生の頭の中身をのぞくことができる。愛知県の中学1年生の子は、「遊ぶときは僕と妹以上に思いっきり楽しみ、疲れた時は無理をせず総菜のコロッケ。一生懸命何かに取り組み汗を流しながらも、どこか表情豊かで、周りを和ませる母。」が憧れだと綴っている。母のことをよく見ていること、尊敬していることが伝わり、心が温かくなった。中学生は、なかなか親に素直になれなかったり、大人に反発してしまうこともあるかもしれないが、彼らなりにいろんなことを考えて生きている。中学生のなりたい大人に、大人の私でも「こんな大人がいたらいいな」、「こんな風になれたらいいな」と共感しつつ、自分はこんな大人になれているだろうかと思わず考えてしまう。本書をきっかけに、リアルな中学生の声に耳を傾け、「なりたい大人」を意識してみると、明るい未来が見えてくるような気がする。(本館 神村)

『夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話』FLORA・ANNIE・STEEL [再話] 吉澤 康子 編訳 和邇 桃子 編訳 アーサー・ラッカム 挿絵 平凡社 2019年刊 一般書 388.33【南館所蔵】

夜のひと時に読書をされる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。子どもの頃、眠る前に読み聞かせやおはなしを語ってもらったことがあるという方も多くいらっしゃることと思います。私はお話の途中でぐっすり眠ってしまったことや、反対に続きが気になって眠れなくなってしまったこともありました。
本書は、イギリスで読み継がれている19のおとぎ話を「夜ふけに読みたい」と題し、掲載しています。訳者のあとがきによると、イギリスの童話が日本に入ってきたのは明治時代だそうです。今も多くの方に人気の「不思議の国のアリス」や「ピーターパン」などが日本でも読まれるようになりました。今回描かれているアーサー・ラッカム氏の挿絵が当時のイギリスや日本でも使われており、細かな描写とユーモラスなキャラクターの味わいが昔も今も親しまれています。
冒頭では、ラッカム氏が飼っていたという猫たちがキャラクターになって登場し、おとぎ話を紹介してくれます。「ジャックと豆の木」や「三びきの子豚」など私たちがよく知る昔話も収録されていますが、記憶している物語とは少し違うと思われる方もいらっしゃるでしょう。私は、三びきの子豚の意外な結末に驚かされました。昔話は、土地や時代によって変わったり編者によっても変わったりします。最近では、内容が残酷だからと結末を変えてしまうこともあるようですが、昔話で語られるからこそ受け入れられる教訓があると思います。登場人物たちが様々な窮地を乗り越えて幸せになったり、逆に愚かな行いが災いを招いたりする姿は、子どもだけでなく大人も引き込まれる魅力があります。
不思議で少し恐ろしくもありながら、ユーモアたっぷりのおとぎ話の世界を存分に味わってください。(南館 村田)

『虎の牙』モーリス・ルブラン 原作 南 洋一郎 文 ポプラ社 2000年刊 児童書 953 ル【両館所蔵】

私が初めて「読みたい本」に出合った記憶は、小学校の図書室の片隅で『怪盗ルパン全集』(ポプラ社)を見つけたときに遡る。そこで、寅年の新年にあたっては、「初心忘るべからず」のことわざにならい、本書を紹介したいと思う。
大富豪コスモ・モーニントンが2億フランの財産を残して急死した。妻子のない彼の遺言状には「遺産は遠縁の者、これがいないときは親友のドン・ルイス・プレンナに譲る。これらの人々の捜索をパリ警視庁に依頼する。」と記されていた。警視総監は腕利きの刑事を派遣したが、血縁者の捜索は難航、相続人候補としてスペインの貴族プレンナが警視庁に呼び出された。このプレンナの正体こそ怪盗ルパンで、猛獣のような歯型がついたチョコレートを証拠品として持ち帰った刑事が毒殺される現場に立ち会った彼は、コスモも同じ毒で殺されたことを知る。ちょうどそこへ、青ざめた老人フォービィユがやってきて、自分も今夜殺されると騒ぎ立て、ルパンはこの老人の屋敷で毒殺魔と対峙することになる。すると、犯人を示すのであろう証拠品の歯型は、なんとフォービィユの美しい妻マリアンヌと一致するのだった。彼女の逮捕後、真犯人は別にいると悩むルパンの屋敷では秘書のルバスールが怪しい動きを見せはじめ、彼に危険が迫る展開に目が離せなくなる。
なお、本編の読後は「ルパン同好会会長」による解説も忘れずにお読みいただきたい。本書が著名な推理作家たちの作品に多大な影響を与えていること、また、本編中では明かされていない謎についても言及している。
児童向けの本なんて、と侮ることなかれ。子ども心にも夢中になった怪盗紳士の活躍とロマンスは、大人になってなお一層楽しめること請け合いである。今年もみなさんが一冊でも多くの「読みたい本」に出合われることを願うとともに、一人でも多くのルパンファンが生まれんことを密かに願う。 (本館 大西)

『闇を泳ぐ 全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。』木村 敬一 著 ミライカナイ 2021年刊 一般書785.22 【南館所蔵】

今年も、厳しい状況の一年でしたが、心躍る出来事もありました。東京オリンピック・パラリンピックでの、滋賀県出身の選手の活躍には、応援にも力が入りました。その中の一人、競泳の金メダリスト木村敬一氏、自身初の著書が本書です。
以前に、市内の小学校で講演されたことがあり、子どもたちを前に、全盲であることはハンディではないこと、チャレンジすることの大切さを、自身の体験を通じ、失敗談も交えユーモアたっぷりに話して、子どもたちも熱心に聞き入っていたそうです。著書でも、講演について「聞いてくれた子供にとって何かのきっかけになればと思い、なるべく受けることにしている。」と語っています。
著者は、わずか1歳で増殖性硝子体網膜症を発症し、福岡の専門医へ通院、7回の手術の甲斐もなく2歳で全盲になりました。滋賀県立盲学校の4年生で水泳を始め、12歳で筑波大学付属特別支援学校へ、ロンドン大会・リオ大会で合計6個のメダルを獲得しましたが、その後一念発起しアメリカに単身で乗り込み、更なる高みを目指しました。夜中に学生寮を脱走・買い食いし、4階までよじ登り帰ったこと、駅のホームに落ち、その当日の教員採用試験にまで落ちたことや、ボルチモアで元メジャーリーガーの上原浩治氏の自宅にホームステイしたことなど、とんでもないエピソードも満載です。波乱万丈の半生は、障害者はこうだろうという私の勝手な思い込みをことごとく打ち破りました。
著者は、「闇は決して暗くもなく、怖くもない、どこまでも続く希望にみちた、無限の可能性がある世界である」ことを私に教えてくれました。「僕が闇を泳ぎ続けることができたのは、…本当に数えきれないほどの多くの人々のおかげ」と語っています。この言葉が、あの一番高い表彰台で「君が代」を聞き熱い涙を流した著者の姿に重なります。 (本館 川端)

『精神科医が教えるストレスフリー超大全』樺沢 紫苑 著 ダイヤモンド社 2020年刊 一般書498.39 【両館所蔵】

本書は、精神科医の著者が、人生で直面する様々なストレスを解消するための具体的で実践的かつ効果的な方法を経験に基づいてシンプルに紹介した指南書です。まず序章では、すべてのストレス解決の基本となる5つの実践方法が紹介されています。各章では、人間関係、プライベート、仕事、健康、メンタルの5項目に分けて、「信頼できる人」と「信頼できない人」を見分ける方法やSNS疲れを解決する方法、「お金の不安」を取り除く方法、「健康的に痩せる食事法」など、悩みが具体的に示されているので、自分の気になるところを選んで、その実践方法を学ぶことができます。各項目の最後には、さらに専門的に掘り下げたい人向けに、おすすめ本や映画など紹介されています。そして、終章では、生き方について著者がたどりついた5つの考え方と7つのエッセンスで本書がまとめられています。
全編通して、いろいろ学びたくなるフォローも行き届いていて、著者ならではの視点や意外性に刺激を受けました。
すべての悩みに共通する解決の手順は、対処法や解決法を知る(Know)。そして実行すること(Do)。「ストレスを受け止めて耐え忍ぶ人」から、「ストレスをスカッと受け流す、しなやかな人」になるノウハウを本書で身につければ、これからの時代、どんな変化があろうと大丈夫。「心と体の健康」を基盤に「幸せ」や「社会的成功」を得やすくなると、著者は言います。
新型コロナウイルスによる影響で、外出制限や自粛生活を余儀なくされている今、普通に生活するだけでも、ストレスを多く抱えています。これから続くことになる「アフターコロナ」「Withコロナ」の時代に、「ストレスの対処法」は必要不可欠なスキルであることは間違いありません。ピンチをチャンスにしませんか? 生き方を変えるのは「今」です! (本館 二井)

『作家の手料理』秋山 十三子[ほか] 著 平凡社 2021年刊 一般書 596.04【本館所蔵】

「食」に関する小説やエッセイ本は数多く出版されている。私自身、特別選んでいるわけではないのに、読み終えた本を振り返ってみるとなぜか食べ物が登場するものが多いのは、美味しそうな表紙やリード文で紹介されている料理の描写についつい引き寄せられているせいかもしれない。
本書では、向田邦子氏をはじめ、茨木のり子氏や牧野富太郎氏など各分野で活躍した著名人たちが自身の食へのこだわり、思い出の料理や得意料理などを綴ったものを4つの章に分けて紹介している。エッセイには、写真もイラストも出てこないが、著者たちの文章からは様々な料理の作り方の工程や出来上がりが目に浮かび、さすが書き手の名手たちであると思わせられる。
脚本家・作家である向田邦子氏は、半月の海外渡航を終え、帰国後いちばんに作ったのが「海苔弁」だったそうだ。ご飯を炊き、海苔をのせ、肉のしょうが煮と塩焼き卵をつけるというシンプルな料理だが、向田氏の手にかかるととびきり贅沢な料理に思えてくるのが不思議である。また、同時通訳者・作家の米原万里氏が紹介している料理が「トルコ蜜飴」と「ハルヴァ」である。材料や作り方は似ており、砂糖、蜂蜜、ナッツ類などを泡状にして固めたお菓子だそうだ(諸説あり)。見たことも食べたこともないお菓子だが、幼い頃の思い出と一緒に描かれているお菓子はとても美味しそうで、どんな味や食感がするのかと想像するとわくわくする。
最近のレシピ動画やレシピ本の料理は、動画や写真を使って分かりやすく丁寧な手順が紹介されており、日々の献立に役立てている方も多いと思う。しかし時には文章から出来上がりを想像しつつ、初めての料理に挑戦してみるのもおもしろいかもしれない。 (南館 村田)

『東京ディストピア日記』桜庭 一樹 著 河出書房新社 2021年刊 一般書 916サ【本館所蔵】

ディストピアとは、ユートピア(理想郷)の対義語で「暗黒世界」とも訳される。「コロナ禍」と称される不自由な生活に突如放り込まれ、いつ抜け出せるかわからない不安を抱える現在、まさに「暗黒」と感じている方も多いかもしれない。
日本に新型コロナウイルスのニュースが流れ始めた頃、新聞連載『小説火の鳥』執筆のために太平洋戦争の資料を読み込んでいた著者は、感染拡大に対する各国の対応や人々の反応の中に戦時下とシンクロするものを感じ取り、危機感を覚える。そこで、国家による歴史「正史」には残らない、私たちひとりひとりのささやかな日々の歴史「稗史」を残すため、身近に見聞きしたことと新型コロナウイルスに対する世界の動きの両方を一年に渡り記録したものが本書である。
著者の暮らす東東京の下町は、インバウンドの観光客が来なくなり、緊急事態宣言の発出で飲食店は休業し、みるみるうちに閑散としていく。その中で“いつものカフェ”“ホテルのラウンジ”“クラフトビールのバー”“おじいちゃんマスターの喫茶店”“美容院”など、行きつけの場所の人たちとのやりとりや、変わっていくこと、変わらないもの、そして自分の気持ちの揺れ動きを丁寧に拾い集めている。
喫茶店のマスターが「世の中にゃ、変えていかなきゃいけない問題がたくさんあるが、他に選択肢がなくなり、もう変わるしかなくなっちまうまで、人間ってのはなかなか変われないもんだよなぁ」と呟いたことをきっかけに、今こそ社会の問題を根本的に変えていくことができる時なのではないか、と著者は考え始める。
アフターコロナの世界をどう生きていくのか。漠然とした不安はあるとしても、著者が頼もしく感じたという冷静に未来予測をする若者たちのように、“根拠ある推測をもとに最悪の状態をサバイブする”姿勢でありたいと思う。(本館 大西)

『生きるぼくら』原田 マハ 著 徳間書店 2012年刊 一般書913.6ハ 【両館所蔵】

いじめを受け、ひきこもりになった主人公の麻生(あそう)人生(じんせい)24歳。一日じゅう、四畳半の自室にこもって暮らし続けていた。働いてもいないし、学校にも通っていない。ネットで世界とつながり、母に買い与えられたカップ麺とコンビニのおにぎりが主食の日々を送っていた。ところがある日突然、母が書置きをして失踪したのだ。〈あなたはあなたの人生を、これからも好きなように生きていってください。母より〉手紙の横には年賀状と現金の入った封筒が置いてあった。幼い頃家族で訪れた蓼科のおばあちゃんからの年賀状に、「余命数か月」とあり、人生はおばあちゃんに会いに行く決心をする。田舎で一人暮らしのおばあちゃんは認知症を患っていた。人生のことを覚えてもいない。そして同じようにおばあちゃんを慕う、つぼみと出会う。
物語は、いじめからひきこもりとなった人生と対人恐怖症のつぼみが、おばあちゃんと一緒に暮らす日々を幼い頃の思い出と交錯させながら丁寧に描いている。不器用な二人はぶつかったり、時に苦しんだりしながらも、たくさんの『かっこいい大人』達に助けられながら少しずつ変わり、成長していく。その姿は、彼らが挑んだ米作りについて語ったおばあちゃんの言葉と重なる。「初夏から梅雨にかけては、苗はどんどん分けつしてすくすく育っていくの。葉っぱは青々として、丈もぐんぐんと伸びる。七月頃の水田風景は美しいわね。このあたりでも、八ヶ岳を背景に広がる水田の風景を見れば、目で呼吸したような気分になるのよ。そうね、この頃の稲は青年期。青春時代そのままに、生き生きとエネルギーに満ちて、生きることを謳歌しているみたい。」
親子、家族、いじめやひきこもり、認知症、生きることなど、読者によって考えさせられるテーマが様々取り上げられているが、本書で誰もが感じ入るのは、一粒のお米の尊さではないだろうか。読後は炊立てのお米でおにぎりを作ってほおばり、『生きるぼくら』を感じたくなる。 (本館 二井)

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