はしかわ市長のだいすきくさつ(令和4年10月)
更新日:2022年10月1日
文章は、「広報くさつ10月号」に掲載された内容です。
子どもが子どもでいられる街に
高く澄んだ空に、心地よい秋風に乗ってキンモクセイの香りがふわりと舞う、大きく深呼吸したくなるような季節になりました。朝の光を浴びながら深呼吸すると、すっと心が穏やかな気持ちになり、改めて呼吸の大切さを実感しています。
皆様は「子どもが子どもでいられる街に」というスローガンをご存じでしょうか。これは厚生労働省のホームページに掲載されているもので、ヤングケアラーを支える社会を呼び掛けています。ヤングケアラーとは、本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことで、滋賀県では20歳代の若者までを含めて「子ども若者ケアラー」と呼んでいます。
滋賀県社会福祉協議会が県内の全小中高等学校を対象に調査し、今年3月公表した「子ども若者ケアラー実態調査報告書」では、少なくとも590人が、子ども若者ケアラーとして把握されています。学校生活で、宿題や持ち物の忘れ物が増え、学校を休みがちになるなど、家庭の問題が学校生活にも影響を及ぼしています。
市では、この10月から子ども・若者総合相談窓口を開設しました。子ども若者ケアラーの相談をはじめ、子どもや若者が抱える多様な問題について、関係機関と協力しながら、一人ひとりの想いに伴走し、子どもや若者の健やかな成長を支援します。どんな悩みでも窓口に相談を寄せていただきたいと思います。
「クマのプーさん」の翻訳で有名な、児童文学作家で翻訳家の石井桃子さんの言葉に「子どもたちよ 子ども時代をしっかりとたのしんでください。おとなになってから 老人になってから あなたを支えてくれるのは 子ども時代の『あなた』です(注釈)」というものがあります。友人と笑い合い、学問に触れ、思いっきり遊ぶ経験は、子どもたちのこれからの人生の糧となることでしょう。
子どもが家事や家族の世話をするのは当たり前のことと思われる方もおられるかもしれませんが、子ども若者ケアラーの過剰な負担を減らすことで、子どもが子どもでいられる貴重な時間を守れるまちでありたいと思っています。
注釈:平成13(2001)年7月18日付、杉並区立中央図書館で開催された「石井桃子展」に寄せられた色紙より引用